三谷祐児の国語工房

長年培ってきた国語の指導方法を公開しています。
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皆様のお役に立てば幸いです。

愚考小見・教育論文

【愚考小見】

 

  インタビュアーの皆さん、先生方、気持ちを聞くのはやめませんか 

 

 8月21日(金)、阪神タイガースの藤浪晋太郎投手が692日ぶりに勝利投手となった。当然ながらヒーローインタビューは藤浪投手だった。しかし、気になったのは、インタビュアーの「・・・気持ちでしたか?」という会見の内容である。6回の会見の中で4つも気持ちを聞いていた。私は「まだ(また)、気持ちを聞いている・・」と残念な気持ちになった。皆さん、いい加減気持ちを聞くのをやめませんか。

 私がそう考えるようになったのは、サッカーのある外国人監督(多分、オシム監督だったかと思う)が、インタビューの在り方に「なぜ日本人は気持ちばかり聞くのか」と疑問を呈したという記事を読んだからだ。考察してみると、気持ちばかりを聞くようになった背景には次のようなことが考えられる。

① 戦後の学校教育の場で、特に国語教育、中でも文学教材において「登場人物の気持ちを聞いてきた」現実がある。

  例「その時ごんはどんな気持ちだったでしょう?」「その時メロスはどんな気持ちで走り始めたのでしょう?」等

② これは推測だが、昭和30年代に入りテレビが普及し始め、あるインタビュー者が、国語教育の影響からか「今のお

  気持ちをお聞かせください」等の会見をしたらそれが定番になり今日に至っているのではないか。

  また、そのテレビ放送を聞いて、学校現場でもさらに気持ち発問が定番になっていった。

  (推測ですが当たっていると考えています。)

③ 国語教科書や教師用指導書にも登場人物の気持ちを聞くようになっていた。そう書いてあれば、現場の教師は疑いも

  せず気持ちを聞きます。道徳等でも然り。

 

 なぜ気持ち発言がいけないのか

 

 気持ちというのは広義に解釈すると「考え」という意味もありますが、普通は感情を表す言葉と見てよいでしょう。感情を聞いてどうするのでしょう。

 「藤浪投手、初勝利おめでとうございます。今のお気持ちを教えてください。」嬉しいに決まっているじゃないですか。

 我が子を亡くした母親に「今のお気持ちを」って聞きますか?

 国語の授業を例にとると、

 T:「その時、ごんはどんな気持ちだったと思う?」

 C:「悲しかったと思います。」

 T:「そうですね。悲しかったんですよね。よく読み取りましたね。」  馬鹿じゃない!

 少し、ましな指導者になると、二段構えで聞きます。

 T :「悲しいと思ったんですよね。なぜ、そのように考えたの?君の考えを教えて?」  1回で聞けよ!

 感情を聞いてしまうと、そこで完結してしまいます。発展性がないんです。インタビューする側にとってはこれほど都合のいい言葉はありません。気持ちは?気持ちは?って聞いていればいいのですから。

 同様に、「感想」も都合の良い言葉です。「今のご感想は?」「感想をお聞かせください。」って言っておけばいいのですから。そして、子どもたちはそのインタビューの真似をするようになるのです。「気持ち」と「感想」を打破しよう!

 

「今、どんなことを考えて・・・」に変えよう!  考えを聞くインタビューへ

 

 「気持ち」や「感想」に変わる熟語を探してみますが探し切れていません(ないから、「気持ち」「感想」を使ったという見方もできます)。今、一番しっくりといっているのは「今、どんなことを考えて・・・」という言葉です。

 「藤浪投手、初勝利おめでとうございます。今のどんなことをお考えですか?」

 「ごんは一体どんなことを考えていたのだろう?」

 「メロスはどんなことを考えて走り出したんだろう?」

 気持ちを聞くインタビューから、考えを聞くインタビューへ転換していってほしい。そうしていけば、歴史に残る名インタビューも数多く生まれるに違いないと考えます。

 現在、国語教科書にはインタビューの教材も載っています。子どもたちは毎日のように聞くテレビのインタビューを想起しながら学習をすることでしょう。各メディアのインタビュアー、アナウンサーの皆さん、話し方のプロとして、気持ちインタビューではなく考えを聞くインタビュー、考えを引き出すインタビューをどうかお願いします。

 そして、日々教室で頑張っておられる先生方、「気持ち」発問を廃し、考えを引き出す発問をしてください。もちろん、感想も同様です。「初発の感想」ではなく「読んで考えたことを書こう」でいいのです。

 数年後には、「気持ちインタビュー」がなくなり「考えを引き出すインタビュー」が当たり前となり、子どもたちは日頃から自分の考えを大切にする子どもとなっていく、そういう近未来を夢見ています。(2020、8、22)

 

 

 □ 先生方へ -それぞれの春- 

 

 置かれたところで咲く  シスター渡辺和子

 

 この度の人事で、新しく校長・教頭に昇任された先生方、新規採用教員として教壇に立たれる先生方、また学校を転任された先生方等々、きっと大きな志を抱いておられることでしょう。そうでなくてはいけません。しかし、自分の意にそわないで悶々とされている方も中にはおありでしょう。それは、今はその時期ではなかったと思いましょう。来たるべき時に備え力を蓄えたいものです。学校や役職や担当がどこであっても、「置かれたところで咲く」努力を尽くしたいものです。「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉もあります。お天道様は、あなたの努力をきっと見ていてくださるものです。楽しみですね。さあ、先生、子どもたちが待っていますよ。溌溂と。笑顔で。

 

人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える 

しかも一瞬早過ぎず、一瞬遅すぎない時に   森信三

 

 4月から出会う同僚の先生、子どもたち、保護者や地域の方々、全てご縁の賜物です。縁とは本当に不思議なものです。いろんなご縁の形がありますが、良い縁を結ぶ方法は、自分自身が「この人はいい人だ。この人に教えていただきたい。この人と出会いたい。」と思い「自ら門を叩く」ことです。うしてできた素晴らしいご縁のことを「勝縁」と言います。どうぞ皆さん、新しい門出に「勝縁」を結んでください。上の言葉は、私淑する森信三先生の言葉です。まさに真理です。桜咲く4月、皆さんは、どんな人と出会うのでしょう。どんな子どもと出会うのでしょう。楽しみですね。さあ、先生、子どもたちが待っていますよ。胸を張って。笑顔で。

 

 困ったときにね、観音様が現れるのよ   瀬戸内寂聴

 

 寂聴さんの法話CDを聴いていたら、上の言葉が出てきました。これも真理だと思います。日頃から信心をしていたら、困ったときに観音様が現れてくれると寂聴さんは説きます。その観音様は、どんな姿をして現れるかは分からないのだそうです。ある時は男、ある時は女、またある時はお年寄りや子ども、赤ちゃん、動物、花鳥風月。もしかしたら、目の前に現れるクレーマーや手のかかるやんちゃな子どもが観音様の姿かもしれません。困ったとき、辛いなって思ったとき、「もしかして観音様かも」と思うと、心が落ち着き余裕が生まれてきますね。是非心がけてみてください。観音様はご先祖様でもいいかもしれませんね。

 さあ、先生、子どもたちが待っていますよ。笑顔で。教室の入り口を開けよう!

 


 

【教育論文】

◇平成30年度 鳥取市教育論文 優秀賞受賞

論文題目 「義務教育学校における午前授業5時間制の可能性」

 

 ~時間のずれと寺子屋方式を活用し新しい学校を創造する~ 

 

 なぜ、給食指導は教員がやらなくてはならないのでしょう。皆さん、そうは思いませんか。

私は、予てより、この給食時間の効果的な活用方法を模索していました。そして、全ての学校では無理ですが、今後増えていくと考えられる義務教育学校においては可能な画期的な方法を考案しました。

この論文の中では、午前授業5時間制を実践する義務教育学校を想定して書いていますが、午前授業5時間制を行わない義務教育学校や小規模な小・中学校でも可能と考えます。

 果たして、どんな方法なのでしょう。是非、覗いてみてください。きっとお役に立てるヒントがありますよ。 

 

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平成30年度 鳥取市教育論文の表彰式

 

 鳥取市教育委員会主催の教育論文の募集は、平成30年度をもってその長い歴史を終了いたしました。最後、優秀賞をいただいたのが私の拙論でした。感謝申しあげます。

 


 

 ◇平成17年度 第20回東書教育賞優秀賞受賞 論文題目「五七五のリズムを国語の授業に生かす」

皆さん、五七五のリズムというと、俳句や川柳ですよね。

私たち日本人のDNAの中には、この五七五のリズムがしっかりと組み込まれているように私は思います。

実践を積み重ねますと、どの子も興味を持って取り組みます。

作文を苦手にしている子でも五七五には意欲的に取り組もうとしますので不思議です。

この論文の中では、私が考案した方法をたくさん紹介しています。

きっと皆さんの役に立てると考えています。この実践から「100マス作文」が生まれてきました。

是非覗いてみてください。

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東書教育賞 第20回入選者発表

  


 

◇平成28年度 第32回東書教育賞優秀賞受賞 論文題目「俳句で学校づくり-俳句づくりと全校俳句大会の実践を通して-」

俳句で学校づくりができるの?皆さん、きっとこう思われたに違いありません。それが、できるんです。

俳句を作る学校は多いと思います。

しかし、それだけでなく、地域を巻き込んだ全校俳句大会の実践を通して学校づくりができたのです。

きっと、管理職の皆さんの学校運営のヒントとなるでしょう。

また、若い先生方であれば俳句で学級づくりも可能になってくることでしょう。多くのヒントが満載ですよ。

是非覗いてみてください。

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 東書教育賞 「第32回(平成28年度)東書教育賞」受賞論文のご紹介

 

 

2024.10.19 Saturday